障害者雇用×行動分析学 雑記帳

障害者雇用と行動分析学についての雑感です

【目標を達成するために(1)】環境を詳しく把握しよう(物理的環境編)

【目標を達成するためにシリーズとは】

「やりたいと思っているけど、なかなかできない」、「止めたいと思っているけど、なかなか止められない」という悩みは、ダイエットや勉強、貯金、禁煙など身の回りにたくさんあります。これらはテーマは異なっていてても、「行動」の問題という一つの共通点があります。このシリーズでは、そのような「行動」の問題解決に向けてどんな情報を集めればよいかを解説します。

 

問題の解決策を考える前に問題が起きる原因を探ることがとても重要です。そして、原因を考えるためには情報が必要です。

では、どのような情報が必要なのか、基本的なものをご紹介します。

 

(1)環境を詳しく知ろう(物理的環境編)

最初は「問題に関連のある物理的環境について詳しく知ろう」です。

問題を解決するにあたって、まずは問題が起きている現場を正確に知ることが大切です。

なぜなら、その場所の詳しい見取り図がないと、問題を間違って捉えていた李、具体的な解決のアイデアが出てこないことが多いからです。

 

例えば、みなさんが以下のような相談を持ち掛けられたら何と答えますか?

 

相談者

「いやー、私は整理整頓が苦手で。職場のデスクがぐちゃぐちゃなんですよね。  どうしたらきれいにできますか?」

あなた

「     」

 

おそらく、一般的なアドバイスはできると思います。

「いらない物を捨てよう」とか、「書類はカテゴリごとに分けよう」とか、「できるだけペーパーレス化をしよう」など。

 

ある程度はこのような一般的なアドバイスでも効果があると思いますが、

より個別具体的に解決していこうと考えると、より詳しい情報が必要となります。

 

机の広さは? 机周辺の物の配置は? ゴミ箱の位置は? 

使えるキャビネットはある? 引き出しはいくつある? 書類入れはある? 

 

こういう情報が明らかになるとアドバイスも具体的にできます。

「机とキャビネットの配置がこれなら、こういう動線に変えると片付けやすい」

「ゴミ箱がそばにないなら、一つここに置こう」

「書類を入れる書類トレーを机の左側に置こう」 など

 

おそらく実効性の高いアイデアも出やすくなると思います。

どんな行動の問題に取り組むにしても、まずはその周辺状況を整理してみましょう。

そのためのシートはこちらです。メモ代わりにご活用ください。

環境を整理するシート

「自分の時間を取り戻そう」実践レポート(その3)行動記録の結果

前回の記事以降、約4か月間行動記録を取り続けてみました。

その結果です(量が多いためダイジェスト)。

記録は前回紹介した<トキシル-時間管理>を使いました。

apps.apple.com

 

【結果】

・1日に占める仕事時間(通勤時間含)の割合がとても多い

・エッセンシャル(家事など)も思っていたより時間がとられていた

・目標行動に取り組んだ時間はとても短い

・自己研鑽の時間もほとんど取れていない

・自分のための時間もほとんどない

 

業務時間(4月)

自己研鑽(4月)

集計グラフ(5月)

【感想】

・自分の時間を視覚化できたことで、何にどれくらい時間を使っているか直感的に把握できた。

・「やりたいこと」を後回しにしていて、思うように時間が確保できていなかった。

・トキシルで時間を取ると、「今何をする時間だっけ?」という意識(内言語)が自発されるようになった。

・これまでは、ある行動をしていても、つい脱線しがち(別のことを始めてしまう)だったが、元の行動に戻りやすくなった。

 

【記録方法に対する感想】

・記録に関しては、記録の取り忘れ(1日全く取ってなかった!)は1度もなかった。

・しかし、ある行動(家事など)を始める際にボタンを押し忘れて、数分から数十分後に修正作業をすることがたびたびあった。

・その点、トキシルは後から修正できるので大変助かった。日付をまたいで修正できる点もよかった(寝落ちして睡眠ボタンを押し忘れてしまったときなど)

 

<惜しい部分>

・月単位の推移が線グラフで表示できるとよりよい

・任意の期間の「行動の累積グラフ」が表示できるとよい

・表示画面の縦表示、横表示が自動で切り替わるが、切り替えなしも選択できるようにしてほしい(自分は横表示は全く使うことはなかった)

 

 

まとめ

今回の結果から、以下の方向で取り組みたいと思います。

①業務時間の時間短縮

②エッセンシャルタイムの時間短縮

③やりたいことを最初にスケジュールに組み込んで時間を確実に確保する

 

結論としては当たり前のものですが、実態がわかると根拠を持って目標を立てることができました。

また、このまま記録を取り続ければ改善したかどうかも確かめられます。

 

今回の方法は、「自分の実態把握」と「改善すべきことの絞り込み」をすることができるので様々な目標に取り組む方に役立つものだと思いました。

「自分の時間を取り戻そう」実践レポート(その2)行動の記録を取る方法探し

(前回の続きです)

本書では生産性とは「投入した希少価値に対する得られた成果の割合」と定義しています。

そして、本書でターゲットにしているデータは希少価値の一つである「時間」を指標としています。

 

「時間の家計簿」をつける

本書では、自分の時間を取り戻すための方法が大きく2つ提示されています。

「働く時間を減らす」

「全部やる必要はない」

 

具体的にはさらに細かいポイントが9つに分けられて説明されています。

そのうち、8つはルール(確立操作)による介入です。

そして一つだけ質の異なるポイントがありました。

それは「時間の家計簿をつけよう」です。

 

「時間の家計簿」

時間の家計簿とは、自分の生活の中で生産性の低い活動を探すために1週間程度、24時間で何にどれだけの時間をかけているのかを詳細に記録したものです。

 

「自分は毎月何に使っているのか」

「減らしたい時間と増やしたい時間は何か」

をデータに基づいて考えるために記録をします。

 

これは、行動分析学でいうところの「ベースラインを取る」ことです。

データに基づいて考えるという点にとても共感できました。

行動の正確な把握と、その後の介入にはデータは必須です。

ただし、この行動の記録を取ることは実は簡単ではないんですよね…

 

「記録を取るコスト」

仕事柄、自分や他人の行動記録を取っていますが、行動の記録を正確に取る(カウントする)ことはかなり難しく、コスト(労力)がかかります。

 

本書には、「最近はスマホタブレットに使いやすいスケジューラーなどもあり、記録を取るのも簡単になっているので~(本書P196)」と書かれています。

また、ありがたいことに時間の家計簿の表(例)も付けてくれています。

「どこまで正確な記録が必要か?」は、「どんなことに記録を用いるのか?」に依って変わるので、人によっては、ある程度大掴みに捉えれば、そこまで精度を高くしなくてもよいのかもしれません。

 

ですが、この「時間の家計簿」が生産性を高める要でもあるので、いざ記録してみようとして挫折する方もいるかもしれません。

 

そこで、これから取り組みたい方にも役に立つかもしれないと思い、行動記録を取る方法やツールについての結果をまとめてみました。

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記録方法のメリット・デメリット

 

【専用用紙に書く】

 私は専用用紙をエクセルで作って机のそばに置いていました。バーチカルタイプの手帳もこれに含まれるでしょう。現時点でこの方法は使っていません。部分的に使用するメリットは感じましたが、デメリット部分が自分に合わなかったためです。

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手書き用紙

 

スマホアプリ】

 行動記録、習慣、目標達成などのキーワードで検索すれば、たくさんのアプリが出てきます。色々試しましたが、なかなかピッタリくるアプリがありませんでした。

 

一回は入れたが、使わなくなったアプリ

・超自分管理「リズムケア」:計測に複数タップが必要で面倒だった

超じぶん管理「リズムケア」

超じぶん管理「リズムケア」

  • Yasuo Shiohata
  • ヘルスケア/フィットネス
  • 無料

apps.apple.com

・ATrackerデイリータスク:無料版ではタスク登録が5つまでで足りなかった

ATracker - デイリータスクトラッキング

ATracker - デイリータスクトラッキング

  • WonderApps AB
  • 仕事効率化
  • 無料

apps.apple.com

・HabitHub:「1日〇回」タイプの目標記録には向いているが、時間の記録は不向き

play.google.com

 

上記は、私の今回の目的に合わなかっただけで、活動内容によってはとても役立つアプリです。これらが向いている方もいるでしょう。実際にご自身で試してみるとよいと思います。

こういった複数のアプリを試すことで、段々と自分の欲しい機能が明確になりました。そして、私にとって最も重要な機能は「予定を立てやすい」「リマインド」「実績記録が簡単」「視覚的で直感的に時間が把握できる」でした。

そして、以下の機能をできるだけ満たすものが理想でした。

 

<欲しい機能>

・視覚的に一覧できる(24時間)

・極力スクロールしなくて済む

・入力がワンプッシュ(時間補正もしてくれる)

・10個以上の定型タスク名を事前登録できる

・時間やタスクの修正が後からできる。修正が楽

・集計結果をグラフで日時、週次、月次、年次で表現できる

・グラフは線グラフ、円グラフ、棒グラフなどで表現できる

 

これらを一つのアプリで実行できるアプリを探しましたが、なかなか見つからず、しばらく進捗しなかったんですが、「1つのアプリですべて満たすことにこだわらず、複数アプリでやればいいのでは」と思い付き、現在では2つのアプリで記録しています。

 

現在使用しているアプリ

<1日予定表>

・24時間の予定を立ててリマインドするアプリ。円グラフで24時間を表現するので、タスクと所要時間が視覚的にわかりやすい。

一日予定表

一日予定表

  • KIYO, K.K.
  • 仕事効率化
  • 無料

apps.apple.com

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画面はこんな感じ(例)

 

<トキシル時間管理>

トキシル - 時間管理

トキシル - 時間管理

  • Junki Miyanari
  • 仕事効率化
  • 無料

apps.apple.com

・行動実績を記録するアプリ。タスクをグループごとにカテゴリできること、グラフ表現が多彩、行動記録が比較的簡単(数タップあるので十分ではないが)、増やしたい行動、減らしたい行動という設定がある。

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【私の使い方】

①1日予定表アプリで1日の予定を立てます。そうすれば、やるべき時間が来たら1日予定表がリマインドするので、

②それに合わせてトキシルの入力ボタンを押しています。タスクボタンを押せば、それまでの行動記録が自動で止まるので、その点も使い勝手がよいです。

 

現在、約2週間経過していますが、今のところ記録の取り忘れもなく、かなりの精度で行動の記録が取れています。

 

この方法にたどり着くまで結構大変でしたが、この経験自体も仕事でも役立つものでしたので、この模索する過程も自分にとって価値あるものでした。これからもよりフィットした方法は模索していきたいと思います。

 

 

以上、行動の記録を取るツール探しのレポートでした。

(続く)

「自分の時間を取り戻そう」実践レポート(その1)

ちきりん(著)「自分の時間を取り戻そう」ダイヤモンド社2016を参考にして、

自分の生産性を高めてみようという試みのレポートです。

 

実際にじぶんが取り組んでみて考えたことや感想をまとめたり、ちきりんさんの主張を行動分析学の知見から整理して捉えてみようと思います。

※自分のための振り返り用レポートなので読みにくいところがあるかと思います。

 

ちきりんさんについてはこちら。

twitter.com

「自分の時間を取り戻そう」についてはこちら。

www.diamond.co.jp

 

 

【本書の大事なポイント】

・本書の要点は以下の2点だと理解しました。

 

①働く時間を減らす(仕事のやり方を考えるようにするため)

②全部やらない(優先順位を考えるようにするため)

 

行動分析学の用語で言い換えてみると、こんな感じでしょうか。

 

①「使える時間を減らす」という確立操作によって、従来の業務遂行行動とは異なる新しい業務遂行行動を引き出し続ける

 

②「全ての(タスクを)やらない=すべてのタスクを行うと生産性が下がる」というルール(行動分析学におけるルール)による嫌子(生産性低下)出現阻止の強化の随伴性を設定し、「では、何のタスクをやらないのか?」と考える行動を引き出す

 

 

ちきりんさんは本書の中で、安易な時間投入を厳しく諫めていますが、

安易な時間投入行動には

・「差し迫った仕事が終わる」という好子出現+嫌子消失の強化随伴性

・「時間投入以外の解決策を考える」という嫌子出現+好子消失の弱化随伴性

 

が働いていると思われるので、多くの方が「時間投入の罠」にはまるのは、ある意味当たり前のように思えます。

 

そして、1日は24時間ですから投入できる時間は有限です。

そうすると忙しくなってくると削られていくのは、自分にとって大事な活動に充てる時間=「自分の時間」になります。

そこに「自分の欲しいモノ」が曖昧な状態(言語化できていない)があると、さらに自分の時間は削られていきます。

 

ちきりんさんは、この罠にはまった状態に気づいて、自分の時間を取り戻そうと言っています。

個人的には、多くの方が陥りやすい「時間投入の罠」に、何故ちきりんさんはひっかからずに済んだのか?も気になるところです。

本書でも少し触れられていますが、それはちきりんさんのキャリアの中で、

 

・多忙になったとき(先行事象)→時間投入(行動)→仕事が終わった(結果事象)

という行動が弱化され、

・多忙になったとき(先行事象)→新しい業務遂行方法の模索(行動)→仕事が終わった(結果事象)

 

という行動が強化される職場にいたことで、時間投入以外の解決策を考える行動が学習されたのだろうと思います。

 

 

【具体的な方法】

本書では生産性を高める方法として、データで視覚的に表現して判断することを取り上げています。

この点が本当に素晴らしいと思いました。現状把握や介入の効果測定を行うには数値的なデータは必須だからです。

データがない取り組みは、ダイエットするときに体重を計らなかったり、勉強の際に正答数や正答率を取らないようなものです。

本書では「時間の家計簿」と表現されています。

 

本書では生産性を「投入した希少価値に対する得られた成果の割合」と定義しています。そして、本書でターゲットにしているデータは希少価値の一つである「時間」を指標としています。

 

と言うことで、次回のレポートでは、私がどう行動の記録を取っているのかをまとめてみます。

不定期で続けてみたいと思います)

自己レビューと自分の紹介文を作るためのワークシート

自己レビューと自分の紹介文のワークシートです。

ちょっと量が多いですが、ご自身に必要な部分を取り出して使ってみてください。

 

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自分のことをまとめるツール(自己レビューと自分の紹介文)

就職活動をするときや働くときには、自分のことを知っておくことが大切になります。

 

集めた「自分のこと」情報は、会社の人に説明したり、働くときにミスを予防したり、本来の力を発揮するための工夫を考えるときに役立ちます。

でも、どんな情報を集めればいいのか、どうやって自分の情報をまとめればいいのか、

結構難しいですよね。

そんなときに使えるツールをご紹介します。

「自己レビュー」と「自分の紹介文」です

 

情報を集めるには少し時間がかかると思いますが、ちょっとずつ情報を集めて、まとめておくといざというとき役立ちます。

参考にしていただければ幸いです。

 

まずは作り方の説明資料です。

ちょっと量が多くなったので、ワークシートは次回アップします。

 

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自己理解・自己決定に関する自分用の所感メモ

■自己理解・自己決定についての議論を深めるための論点

 

・自己決定とは、全部本人に決めさせること?違うなら「何を本人が決め、何を周囲が決めるか」を決めるのは誰?本人?周囲?

・自己決定の範囲や程度は?手術を受ける患者に「どのメスを使いますか?」を聞くことは自己決定のあるべき姿、理想形と考えていいのか?

・顧客がサービス提供者に対して「適当に見繕って」という選択肢も世の中にはよくあるが、決定をサービス提供者に委ねることは自分の自己決定を破棄してしまったのか?これは「自己決定力が低い状態」とされるのか?

・障害者本人が「私は今すぐ働きたい」というのは、自己決定力が高い状態と捉えていいのか?周囲から見て、働くことに対して準備不足でも自己決定を尊重するならば、すぐにハローワークに連れて行くのが自己決定を支える支援と考えてよいか?これが違うなら何が違うのか?

・「自己決定をしたくない」という選択を自己決定した場合にはどうのように支援するのか?

 

【自己理解・自己決定という言葉を使う支援者】

・自己決定と言いながら、支援がうまくいかなかったときに「本人が決めたことです」と支援者が言い逃れしたり、スキル不足を隠すことに使われる危険性は?そして、そのことに支援者は無自覚になることはないか?

・本人の自己決定ではなく支援者の思い描くルートに乗せてないか?支援者にとって都合のよい選択をすれば自己決定ができている人、都合が悪い選択肢なら自己理解ができていない人?と言われていないか?

・自己決定は重要という点に異論はないが、「自己決定は良いことだ」という暗黙の前提がないか?そして、この暗黙の前提を自分が採用していることに支援者は気付いているのか?その気付きは必要ないのか?自己決定することはいいことだというのは一つの思想であって、絶対ではないのでは?

・無批判に「自己決定はいいことだ」を採用すると、その先には、「あの障害者は自己決定できてない、もっと自己決定すべきだ」という自己責任的な構図にならないか?「自己決定・自己理解ハラスメント」のような。 

 

・支援現場で使われる「自己理解ができていない」という言葉は「支援者の言うことを聞かない人」「困った人」という意味合いで使われているように感じる場面がよくある。これは支援者の力量不足を対象者の自己理解という言葉を使って対象者にその問題の原因を押し付けていないか?自己理解がそのような使われ方をしていないか?

・もちろん、実際には対象者の努力や経験不足等、支援者の技術とは違う要因も多々あることもあると思うが、支援者に常に「自分のやっている支援が間違ってないか?」と自分自身に問い続けるスタンスがないと、簡単に「善意や思想(自己決定はいいことだ。みんな自己決定すべきだ)の押し付け」になり、支援者の意に沿わない対象者に対して「あの人は自己理解が足らない」と批判して終わりになる危険性があるのでは?特に自分で主張する力が相対的に弱い対象者や家族はその矛盾を指摘できる手段を持ち合わせていないことが多いかもしれない。その場合、とても悲惨な状況になる。

 ・「デニーズへようこそ。お客様の年収は?」(立命館・望月昭氏)で書かれている「サービスの科学」と「知る科学」という言葉で表現するなら、「知る科学」に陥っていないかを支援者が常に自己モニタリングしておくことが必要。

最近考えること (ritsumei.ac.jp)

 

 

 まとめると自己理解を対象者に求める前に、支援者自身が「自分の考えや視点、思想がどこから出てきているのか、やっていることに間違いがないのか」と自己点検、自己理解して、それを続けることがまずは必要では?というのが私のスタンスのようだ。

 多分だが、私が誰かから「あなたは自己理解できているのか?」と聞かれても、自信を持って「できています」と言えないので、「自分もできていないのに誰かにそれを求めていいのか?」という気持ちが根底にあると思う。「お前が言うなよ」的な。

  

【現時点で、私が考える自己決定にまつわる支援者に求められること】

①本人に選択を委ねる力(胆力ともいえるか?支援者が決めることは簡単)

②本人に提示できる選択肢を考える力(「この道しかない」は本当か?)

③提示できる選択肢を増やす力(本人の力を伸ばす、周囲の環境を整えるスキルが支援者にどれくらいあるのか)

④選択した選択肢が何であれ、選んだ選択肢を進むことを支える力(一人の人として相手を捉え、選んだことを尊重する。実現させるスキルと困難な道でも付き合っていくぞと腹を括る力)

 いずれも支援者に高い支援技術が求められる。