障害者雇用のゴールは社内に適切な行動随伴性を整えること
障害者雇用を考える時、障害者「を」どう変えるかに注目が向きがちです。
例えば、下記のようなことを障害者「に」教えることが就労支援と思われがちです。
・新しい仕事を覚えること
・社内のルールを覚えること
・職場で求められるルールを覚えること
また、何か問題があれば、障害(特性)がその原因にされがちです。つまり、問題は「障害者の中」に存在しており、その問題を取り除くことが支援の主題になりやすいと言うことです。
ですが、人がどう行動するかは個人の中に要因があるわけではありません。
人の行動は「個人と個人を取り巻く環境との相互作用」によって決まります。
具体的には「行動の直前の状況」→「行動」→「行動直後の状況」という時系列での関係性によって、ある行動をする、しないが決まります。
この関係性のことを行動随伴性と呼びます。
話を障害者雇用に戻します。
行動随伴性の視点から障害者雇用を考えると、障害者が正しい行動をができるかどうかは、周囲の環境(職場であれば、上司や同僚、客など)が大きく影響していると言えます。
そのため、障害者本人への支援と併せて、周囲の社員への教育が非常に重要になります。
例えば、障害者に「朝の挨拶」を教えて定着させたいならば、挨拶の練習等並行して一緒に働く社員に障害者本人が挨拶をしたときに取るべき行動を教える必要があります。
もし、新しく覚えた朝の挨拶を障害を持つ社員がしたとしても、周囲が挨拶を返さない職場環境であれば、やがて挨拶をしなくなることは想像できると思います。
しかし、挨拶をしなくなると「たるんできている」「やる気がない」と個人の内部にその原因を求められる場合も多くあります。そして、本人が改善を求められます。なかには支援者もその意見に同調してしまう場合もあります。
そうならないためには、障害者をいかに変えるかではなく、障害者と会社で一緒に働く社員双方の行動随伴性をアセスメントして、課題点を見つけ、適切な行動随伴性を設定し、機能するように持っていくことが就労支援者に求められます。
行動随伴性で行動を捉えていく視点は、就労支援のどの場面でも必要になる非常に重要な要素です。
就労支援者には必須の知識とスキルと言えるでしょう。