行動の直前、直後の情報を集める
以前、このブログで「行動の機能を考えるためには、行動の直前と直後に何が起きているのか?を確かめましょう」と書きました。
ある「行動の問題」があって、それを改善したいときには、まずその行動の直前直後の情報集めるところから始めてみましょう。
直前とは行動の起きた場所で、その行動のすぐ前に起きたことです。
直後とは、行動とほぼ同時、または1秒以内と考えるとよいかもしれません。
実は「60秒ルール」という言葉があり、60秒以内を直後と捉えることもできるのですが、行動に近ければ近い方が良いです。
まずは、自分の行動(止めたいけど、止められない行動か、続けたいけど続かない行動)について、直前→行動→直後の3つの情報を集めてみましょう。
なぜ、うまくいかないのかの理由が見えてくるかもしれません。
仕事に対する希望を整理する
就職を希望する際には、職種だけではなく、他の労働条件も具体的に考えてみましょう。
具体的に考えることで、今の自分の経験や能力、生活スタイル、体調等に合っているのかをイメージしやすくなります。
働いた経験のない方は身近な方に聞いてみるという方法もあります。
両親や親せき、先生などに尋ねてみて、いったいどんな条件で働いているのかを調べて見ることも仕事の勉強に繋がります。
ある程度、自分の希望が整理できた後でハローワークの求人や求人広告、学校の進路指導に届く求人情報を見てみましょう。
その中から自分の考えた条件に近いものがないかを探してみます。
スモールステップってどんなこと?
障害者の就労支援の業界では「スモールステップ」という言葉がよく使われます。
よく使われていますが、「実演してみて」と言われたらできるでしょうか?
人に何かを教えるときに、とても役立つスキルですが、実際にどうするのか習ったことはありますか?
基本は、今できる行動から少しでも標的行動(ゴール)に近い行動をしたときに強化するというものです。
もし、スモールステップで教えてい来るのにうまくいかない場合は、ステップが「スモール」になっていないことが原因の1つかもしれません。
1つの手順をどこまで細かく刻めばいいのか?
これに正解はありません、学び手の様子をみながらカスタマイズしていきます。
ステップが大き過ぎることが多いので、迷ったらまずは、自分が思っているスモールステップの1つを10分割に分け直してみるといいかもしれません。
それでもなかなか覚えられない手順があればさらに細かく分けてみます。
障害者雇用のゴールは社内に適切な行動随伴性を整えること
障害者雇用を考える時、障害者「を」どう変えるかに注目が向きがちです。
例えば、下記のようなことを障害者「に」教えることが就労支援と思われがちです。
・新しい仕事を覚えること
・社内のルールを覚えること
・職場で求められるルールを覚えること
また、何か問題があれば、障害(特性)がその原因にされがちです。つまり、問題は「障害者の中」に存在しており、その問題を取り除くことが支援の主題になりやすいと言うことです。
ですが、人がどう行動するかは個人の中に要因があるわけではありません。
人の行動は「個人と個人を取り巻く環境との相互作用」によって決まります。
具体的には「行動の直前の状況」→「行動」→「行動直後の状況」という時系列での関係性によって、ある行動をする、しないが決まります。
この関係性のことを行動随伴性と呼びます。
話を障害者雇用に戻します。
行動随伴性の視点から障害者雇用を考えると、障害者が正しい行動をができるかどうかは、周囲の環境(職場であれば、上司や同僚、客など)が大きく影響していると言えます。
そのため、障害者本人への支援と併せて、周囲の社員への教育が非常に重要になります。
例えば、障害者に「朝の挨拶」を教えて定着させたいならば、挨拶の練習等並行して一緒に働く社員に障害者本人が挨拶をしたときに取るべき行動を教える必要があります。
もし、新しく覚えた朝の挨拶を障害を持つ社員がしたとしても、周囲が挨拶を返さない職場環境であれば、やがて挨拶をしなくなることは想像できると思います。
しかし、挨拶をしなくなると「たるんできている」「やる気がない」と個人の内部にその原因を求められる場合も多くあります。そして、本人が改善を求められます。なかには支援者もその意見に同調してしまう場合もあります。
そうならないためには、障害者をいかに変えるかではなく、障害者と会社で一緒に働く社員双方の行動随伴性をアセスメントして、課題点を見つけ、適切な行動随伴性を設定し、機能するように持っていくことが就労支援者に求められます。
行動随伴性で行動を捉えていく視点は、就労支援のどの場面でも必要になる非常に重要な要素です。
就労支援者には必須の知識とスキルと言えるでしょう。
ジョブコーチについて
就労支援サービスの1つに「ジョブコーチ支援」というものがあります。
ジョブコーチとは、ジョブ(仕事)のコーチということで、障害者が働く会社に訪問して、仕事を教えたり、困りごとの解決策を一緒に考えたり、会社の方からの相談に乗ったりしながら、職場定着を行います。
職場で直接支援を受けられる点が最も特徴的な支援です。
利用したいときには、地域障害者職業センターに相談してみましょう。
地域障害者職業センター|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 (jeed.go.jp)
ただし、利用については地域障害者職業センターとの相談が必要になります。
相談の結果によってはジョブコーチ支援以外のサービスが優先順位が高いだろうとの判断が出る場合もありますのでご注意ください。
2つのF
仕事や生活の中である行動を新しく身につけたい、またはある行動を止めたい場合、2つのFを確かめるところから始めてみましょう。
2つのFとは形態(From)と機能(Function)のことです。それぞれの頭文字を取って「2つのF」です。
形態とは行動の見た目のことです。
もし、職場で大声を出すという行動問題があるなら、大声を出すこと(発声)が形態です。
もう一方の機能とはその行動が持っている働きのことです。
大声を出したら、周囲の社員が注目した。
大声を出したら、休憩を促された。
大声を出したら、嫌な仕事を変わってくれた。
行動は同じでもそれぞれ働きが違いますね。
「手を打てば、鯉は餌(え)と聞き、鳥は逃げ、女中は茶と聞く 猿沢の池」
という道歌がありますが、同じ「手を打つ」行動でもそれがもたらす働きが異なりますね。
行動を変えたいときには、見た目だけではなく、どんな機能を持っているのかを考えることが大事です。
機能を考えるためには、行動の直前と直後に何が起きているのか?を確かめましょう。
自己評価と他者評価
就職活動に取り組む際には、自己評価と他者評価の両方を集めてみましょう。
自己評価は、就職活動に関する特定の項目について自分で自分を評価します。
特定の項目とは、健康面や日常生活、コミュニケーション、作業能力などです。
例えば、
●毎日決まった時間に起きているか?
●清潔感のある身だしなみに気を付けているか?(毎日入浴する、洗顔歯磨きをする、ひげをそる等)
●一定の時間作業に従事できるか? など
上記のような項目に対して、できているかどうかを振り返ってみます。
他者評価は、同じ項目について自分のことを知る人の評価を聞きます。
その後、自己評価と他者評価を見比べてみましょう。
もし違いがあるところがあれば、周囲の人の理由を聞いてみましょう。
自分では気づいていなかったけど、周囲からはこう見えていたという発見があるかもしれません。
働くときには、どの分野、どの業界でも基本的には他者評価になります。
いくら自分では「○○できる」と言っても、周囲の評価が基準となります。
そして、周囲の評価のもとになるのは「実績」です。
例えば、「自分はホームランバッターです。毎打席ホームランが打てます!」と自己評価を伝えても、周囲からは「では、昨年の実績を教えてください」や「では、今からグランドに行って、実際に打ってみせてください」といった反応が返ってくるでしょう。
周囲の人は疑っているわけではなく、一緒に働くのであれば確かめたくなるものです。
就職活動でも、同じような場面が出てきます。面接のときにセールスポイント等を聞かれる場面などです。
このようなとき自分に対する自分の評価も大事ですが、周囲の評価も大事になります。
自己評価、他者評価の情報を集めてみましょう。