障害者雇用×行動分析学 雑記帳

障害者雇用と行動分析学についての雑感です

障害があることを会社に伝える前の準備

令和3年3月から民間企業の障害者雇用率が2.2%から2.3%に引き上げられます。

障害があることを会社に伝えて就職することを、「オープン」と呼ぶことがあります。

「次の応募ではオープンで就職をする」等と使われます。

 

もし、障害についてオープンで就職を考えているのであれば、事前準備にしっかり取り組みましょう。

 

まずは、診断名、障害名を確かめます。もし、自分でわからなかったら主治医の先生や保護者、支援者などに確認してみましょう。

 

そして、診断名や障害名に関する本を読んで、一般的にはどのような症状があるのかを確かめます。

 

これは就職活動における自己分析の最初のステップと言えます。

注意点としては、どんな本でもよいわけではない点です。

可能であれば、複数の本を読んでみて、突飛な記述の本ではないかを確かめましょう。

できれば、新しい情報が記載されている新しい本が良いでしょう。

近所の図書館などを探すと節約できます。

学校から社会に出る時期が近付いてくると

 一人ひとりタイミングは異なりますが、いつか誰しも学校を卒業して社会に出る時期がきます。

 

 高校なのか、大学なのか、専門学校なのか、学校の種類はいろいろありますが、

学業や友人関係などの学校生活でうまくいかないことがある方もいるかと思います。

 

 そして、卒業時期が近づいてくると、段々と「社会に出てうまく働けるだろうか?」という心配が募っていきます。

 

 大学生ですと、自分で就職活動を進めることになるので、卒業前から仕事的な活動(スケジュール管理や説明能力、書類作成能力、知らない人とのコミュニケーション等)を体験することになります。そして、そこでうまくできないと就職も難しくなりますし、例え内定が出ても入社後うまくやっていけるのかより心配が具体化します。

 

 そんなときは、もしかしたら自分の苦手さの正体をはっきりさせていくことから始めるとよいかもしれません。

 自分がうまくできないことに気付くことから始めてみるとよいかもしれません。

実はこれは案外難しいものです。

 多くの人は「他の人も大体自分と同じように考えたり、感じたりしている」と思っているからです。

 

気づきやすいポイントは、主に以下の点です。

 ①他の人は簡単そうにできているのに、自分はかなり努力しないとできないこと

 ②ミスしやすいから、かなり注意しているのに、やっぱりミスが出ること

 ③色々な人から「こんなこともできないのか」「どうして何度も間違うの」

  「何度同じことを言えばいいの」などと怒られたり、注意されてしまうこと

 

 「ひょっとして、○○をするのに他の人はそんなに難しくないの?」と自他の違いに気付くことから始めてみてください。

 

 子どもの頃のことを覚えていないときには、過去の資料(通知表や母子手帳など)を見てみると参考になるかもしれません。

 そうすると今苦手なことが、実は以前からずっと苦手なことだったとわかるかもしれません。

 

 苦手なことを観察するのはつらい作業でもありますが、まずは、興味と好奇心を持って自分の苦手なことを詳しく見つめることから始めてみましょう。

【障害者雇用】遅刻や欠勤が多く、出勤が安定しない

障害の有無に直接関係がない話題ですが、遅刻や欠勤が多くて困るというケースは、割とよく聞く困りごとです。

 

そのような困ったことが続く理由は一つではありません。

 

・夜更かし等の生活リズムが不規則になっている

・会社に行きたくない理由(仕事が難しい、上司が厳しくて怖い等)が会社内にある

・両親等、同居している家族よりも後に本人が出勤する

・起立性調整釣障害、睡眠時無呼吸症候群うつ病等、朝の立ち上がりに支障が出やすい身体的な要因がある

・本人なりの働く理由が不明確。または、そもそも働きたいと思っていない  など

 

改善に向けて、まずは1~2週間程度実際にはどのような生活を送っているのか記録をしてみるとよいでしょう。

記録の仕方は、何時に何をしたと紙に書くだけです。

【例】

8:00  起 床

8:30  食 事

9:00  洗顔・身支度

9:30  出 勤  ~

 

これは、欠勤したり、遅刻した日も書きます。

「欠勤をして何をしているのか?」が大事な情報になります。

 

記録を取ることで、なぜ出勤が不安定なっているのかの理由が見えてくる場合があります。

自分のことを知る

「これから働こう」、または「今、会社勤務しているけど、うまくいかない」といったときに、「自分のことを知る」と、労働条件を考える時や就職した後の働き方、困った時の対処方法を考える時に役立ちます。

ここでの「自分のことを知る」というのは、一般的な就職活動での自己分析のような「本当の自分とは?」みたいなものとは少し違います。

 

ここでの「自分のこと」とは、主な内容は以下のとおりです。

 

①つい、してしまいがちな行動

・これまでの学校生活や職業生活の中で、自分がしがちな言動を知る。

・仕事やコミュニケーションで支障になっていることがあれば、おそらく身近な人が指摘してくれているかもしれません。

 

②自分の苦手な活動

・ここでの「苦手さ」とは、他の人は苦労なくできているのに、なぜか自分だけうまくできない、時間がかかる、努力してやっとできることをさします。

・仕事に限らず、学校生活や人との関わりの中で自分の苦手さを振り返ってみましょう。

・苦手なことは誰にでもあります。仕事をする上で支障にならない苦手さであれば、そのままにしておいてもいいのではないかと私は思います。

 

③自分が苦手とするシチュエーション

・同じ行動でも場面が異なるとうまくできないことは多くあります。「練習ならうまくできるのに本番になると緊張してしまう」というのもその一つです。

・報告したい相手が会話していると話しかけられない、締切時間が迫っている、複数のタスクを一度に頼まれた、初めての仕事を任されたときなど、本来ならできるのにこの場面だと難しいということがないか書き出してみましょう。

④スムーズに取組める活動 ・②の逆です。いわゆる得意なことですが、他の人よりもずば抜けてできることというよりも特に意識しなくてもすぐに習得できたことやその活動をしていても苦にならないことです。

・同じタスクを繰り返すことが苦にならない、数字や文字の間違いになぜかさっと気づける、ずっと体を動かしててきぱき行動できるなどが考えられます。

・必ずしも仕事内容と直結しないかもしれません。ですが、仕事に含まれる要素であるかもしれません。まずは書き出してみましょう。

⑤興味関心のあること

・自分が興味関心を持っていることを書き出します。

・必ずしも仕事内容と直結しないかもしれません。ですが、仕事に含まれる要素であるかもしれません。まずは書き出してみましょう。

⑥疲れたり、ストレスを感じた時に出る心身のサイン

・疲れた時に自分がどうなるかを確認しておきましょう。

・イライラする、頭がボーとする、ミスが増える、声が大きくなる、人に八つ当たりする、肩がこる、目が痛むなど、人それぞれのサインがあります。

・自分では気づきにくいかもしれません。身近な方に聞いてみるとよいかもしれません。

 

⑦リフレッシュするための方法

・あなたには⑥の状態になる前やなってしまったときの対処方法はありますか?もしあれば、それを書き出してみましょう。

・振り返ってみて、ない場合は「ない」ことに気付けたことが第一歩です。これから自分にあった対処方法を探してみましょう。

・もしかしたら⑤の興味関心のあることが役立つかもしれません。

 

⑧今の自分の生活リズム ・起床、昼寝の有無、就寝、日中の活動、食事、余暇活動など、今の自分の1日を書き出してみましょう。

・特に、起床と就寝時間は大事です。仕事の出社時間と勤務時間を考える時に必要になるからです。例えば、昼夜逆転した生活を送っているときに、始業8時30分の労働条件は厳しいものかもしれません。

・まずは、自分がどういう生活を送っているのかを時系列で書き出してみましょう。

 

 

以上を書き出してみてください。

少し「今の自分」がどうなのかが掴みやすくなるかもしれません。

 

これから働きたいと考えている方、または今仕事をしているけど、仕事がうまくいってないという方にお勧めです。 ただし、今仕事をしていて職場でうまくいっていない方の場合は、これだけでは不十分かもしれません。

次回は、仕事に就いているけど、なかなかうまくいってないという方の対処方法を書いてみたいと思います。

障害者が就職活動をするときの基本ステップ<就職の準備6>

6.発達障害についての一般的知識を集める

 

 

もし、診断がある方であれば、その診断名に関する情報を集めます。

 

一般的知識を得ることの主な理由は以下のとおりです。
①自分のことをより深く知ることができるから
②誤った情報に気付けるようになるから
③自分の困りごとを解決する情報がある場合があるから
④人に説明する時に、「こういえばいいのか」「こう表現すればいいのか」ということがわかり、うまく伝えるお手本になるから
⑤困った時にだれに頼ればいいのかといった専門機関の情報がある場合があるから
⑥周囲の誤解や偏見に触れたとき、「自分の支え」になるから


就職活動の観点からいうと、④は欠かせません。
会社に障害があることを開示した場合(オープンにするといいます)、面接で自分の障害について説明が求められるかもしれません。また、会社に配慮してほしいことを伝えることも必要かもしれません。その場合、自分の障害について説明できるよう事前に情報を整理しておく必要があります。

 

 

発達障害の情報を集める時には「正しい情報」を集めるよう気を付けましょう。
発達障害の場合、その障害に対する説明には正しい情報、謝った情報が混在していることがよくあります。また、一人ひとり特性なども異なることも把握のしづらさにつながっています。

迷ったら、まずは主治医の先生に相談してみるとよいでしょう。

また、発達障害者支援センター(各都道府県に設置されています)のホームページなどから情報を集めるのもよいかもしれません。ホームページだけではなく、直接相談に行くこともできるでしょう。
http://www.rehab.go.jp/ddis/

 

 

発達障害についての正しい情報は、意外と本人に届いていない場合があります。

・診断時期が幼少期で本人が覚えていない
・診断名を伝える際に、診断した根拠やその障害と一緒に生きていくことの意味や大変さや良さ、一般的な対処方法(その障害との付き合い方)等も一緒に伝えられていない
・問題が深刻化した段階で急に伝えられて、心の準備ができてない(就職後、仕事がうまくいかず、メンタル不調となり心療内科等に通院してみたら、発達障害があること発覚するなどのパターンがあります)
・自分の身近な人の反応が怖くて、相談できない(表立って情報が集めにくい)
・周囲の人の障害に対する考え(身近な人からうちに障害者がいるはずない。障害はよくない。障害があることはかわいそう等の発言がたびたび出ると、本人もそうだと思う場合があります)に触れて、正しい情報が入りにくい


発達障害に限らず、正しい情報があることで、効果的な対処方法や自分なりの障害との付き合い方を見つけやすくなり、誤った情報に振り回されることを防ぐことができます。ひいては、自分の生き方を模索するための土台となると言えます。

 

 

最後に情報を集める時の注意点です。

発達障害が治る」、「○○すれば、絶対に良くなる」、「○○しないと手遅れになる」、「発達障害になるのは、○○のせいだ」等の言葉があるものや攻撃的、感情的な批判表現(※1)の多い情報は避けておくとよいかもしれません。

診断を聞いて動揺したり、不安が強い時期には特に注意しましょう。そのようなときには、ひとまずそのような言葉が載っていない情報を複数知ることを心掛けるといいかもしれません。

その上で、その後に上記のような言説に触れるとよいかもしれません。というのも、何が正しくて、正しくないのかを判断することはなかなか難しいことだからです(※2)。そのような状況なので、全く避けるよりも、「それらの言説のどこがよくないのか?」に気付ける力がある方がよりよいと言えます。

その意味では、避けた方がいいであろう情報を含んだ情報にも、少し触れることで多くの人が同じことを言っている点、見解が異なる点、そして、その理由がわかります。

一言でいえば「発達障害に関する情報の目利きができるようになる」ということです。

もちろん、どのような情報を得るか、信じるのかは個人の自由、自己判断になりますし、私自身それらの文言、発言者等を批判するつもりもありません。

 

 

(※1)根拠に基づいた批判や論理的な矛盾がある点についての批判は、よりよい支援方法を探す上で大切なものです。ここではそれらは除いた感情的で無根拠な批判のことを指します。

 

(※2)現在では、多くの研究実践の蓄積により、現段階では「発達障害とはこのような障害だろう」、「この関わり方、この支援の仕方が効果的だろう」というものが数多く見出されています。そのような定評のある情報からあたるとよいでしょう。

5-2【補足】できるようになるよう少しずつ練習する

前回、働く上で必要なこと、考えておくことなどをお伝えしました。
今回は前回の補足です。
働くうえで必要となるとしても、今の自分にできるとは限りません。
もし、今の自分にはできない項目もあるのなら練習が必要です。
何を練習するかというと、職業準備性に関することから始めるといいと思います。
下の図は、「職業準備性」をまとめたものです。

 

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                図 職業準備性


資格や職業上の経験など「職業適性」に関する一番上の段階は、希望する職種や業界によって変わってきますが、「日常生活管理」「健康管理」の部分はどの仕事に就くときも必要になります。

 

練習するには、①自分で取り組む、②「通う場所」を見つけて、出かける生活を送れるようにする、③(学生なら)学校に行く生活の中で練習するが考えられます。

②の通う場所は、障害者の就労支援としてなら「地域障害者職業センター」、「就労移行支援事業所」が該当します。


地域障害者職業センター(JEEDホームページより)
http://www.jeed.or.jp/location/chiiki/index.html

就労移行支援事業所(厚生労働省サイトより)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/yuusenchoutatsu/sisetu.html

 

取り組む内容やペースは人それぞれですが、会社に通う職業生活に徐々に慣らしていくことが目的の一つと言えます。 

障害者が就職活動をするときの基本ステップ<就職の準備5>

5.希望を叶えるために不足があれば補う方法を考える

 

 

 自分の就きたい仕事や労働条件が整理できたら、今の自分にできそうか考えてみます。
 
 仕事の話の中での「できそうか?」というのは、「資格や経験を有しているのか?」のように聞こえます。当然、企業から指定されている資格や経験は欠かせないものなので、その点のチェックはしておきましょう。

 しかし、それ以外の点の「できそうか?」もチェックしておきましょう。仕事自体のスキルの他に問題になりやすい点をまとめてみました。

 

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仕事自体のスキル以外で課題になりやすいこと(一部)

 

 これらの点は、仕事をする上での基本となる部分の主だったものです。働くときの土台部分ともいえ、ここが不安定だと仕事をする上で支障が出やすくなります。

(なかには、体験を積み重ねて習慣化させることが必要な項目もあるので、長期的な取り組みが必要となる場合があります。そう考えると、小さい時から少しずつ取り組み始めると、本人も周囲も負担が少ないといえます)

 

 そして、できていないと会社での印象が悪くなる可能性があります。それぞれの項目で、「今の自分はどこまでできるのか?」を確かめてみましょう。

 当然、一人ひとりのできることには違いがあるので、もし一人でうまくできないなら、「できるように少しずつ練習する」、「誰に協力を依頼する」等も解決策となります。全て一人で行う必要はありません。どうすれば解決できるかを考えてみましょう。


 また、希望する労働条件を変えるというアプローチもあります。

 例えば、希望する会社の労働条件が「8時出勤、17時終業」なんだけど、今の自分には、「朝早く起きることがどうしてもできない」や「8時間勤務をするほど体力がない」とわかったとします。
 その場合は、労働条件を「遅い時間に出勤できる」、「1日4~5時間勤務」などに変えて探してみましょう。これは、条件に自分を合わせて、できるようになるだけではなく、今の自分にできる条件を探す方法です。

 

 

 今回出てきた「できるようになるよう少しずつ練習する」については、次回取り上げたいと思います。
(つづく)